物流倉庫分野は、倉庫に入ってきた貨物の受け取り、検品、移動、保管、ピッキング、出荷準備などを行う仕事です。

インターネット通販の拡大や物流量の増加により、倉庫では年間を通じて人材不足が続いています。一方で、これまで一般的な倉庫作業は特定技能制度の対象ではありませんでした。

こうした状況を受け、2026年1月23日の閣議決定により、「物流倉庫分野」が特定技能制度と育成就労制度の対象分野へ追加されました。

今回は、物流倉庫分野で特定技能外国人を受け入れるための条件や、対象となる仕事、実務上の注意点についてお伝えします。

物流倉庫分野が特定技能の対象へ追加

物流倉庫分野では、特定技能1号による外国人材の受け入れが予定されています。

ただし、2026年8月時点では、特定技能1号評価試験の開始時期や分野別協議会の加入受付など、一部の運用がまだ準備中です。

そのため、物流倉庫分野が特定技能の対象へ追加されたからといって、すぐに外国人を特定技能として採用できる状態になったわけではありません。

特定技能1号として働くためには、原則として物流倉庫分野の技能評価試験に合格しなければならないため、実際の採用や在留資格申請は、試験の開始状況などを確認しながら進める必要があります。

なお、物流倉庫分野では、現時点で特定技能2号による受け入れはありません。

物流倉庫分野で対象となる仕事

物流倉庫分野の特定技能外国人が従事できるのは、物流倉庫で行われる貨物の入出庫、保管、その他の倉庫作業です。

主な対象業務として、次のような仕事が挙げられます。

  • 入庫する貨物の受け取り
  • 商品や数量の検品
  • 貨物の移動
  • 保管場所への格納
  • 在庫管理に関する作業
  • 注文に応じたピッキング
  • 仕分け、梱包、出荷準備
  • 小分け、再包装
  • タグ付け、ラベル貼り
  • セット組みなどの流通加工

これらの業務を、安全や品質に関するルールに従い、一定の知識と判断力を持って行うことが求められます。

すべての倉庫会社が受け入れられるわけではない

物流倉庫分野で特定技能外国人を受け入れられる事業者は、次の3つの類型が予定されています。

A:登録倉庫業者が自ら倉庫作業を行う場合

倉庫業法に基づく倉庫業の登録を受けた事業者が、自社の倉庫で倉庫作業を行う場合です。

一般的な倉庫業者による直接雇用が、この類型に該当します。

B:登録倉庫業者から委託を受けて倉庫作業を行う場合

倉庫業の登録を受けた事業者が営業に使用している倉庫で、その倉庫業者から委託を受けた会社が倉庫作業を行う場合です。

物流倉庫では、倉庫の運営会社とは別の会社が、荷役、仕分け、ピッキングなどの作業を請け負っていることがあります。

このような業務請負会社も、条件を満たせば特定技能外国人の受入企業になれる可能性があります。

ただし、この類型では、特定技能外国人の雇用継続に関する責任を負う旨の協定書を、業務委託元である登録倉庫業者と共同で作成する必要があります。

C:許可を受けた貨物自動車運送事業者が倉庫作業を行う場合

一般貨物自動車運送事業または特定貨物自動車運送事業の許可を受けた事業者が、自社で使用する倉庫や荷主の配送センターなどで倉庫作業を行う場合です。

例えば、トラック運送会社が自社倉庫で入出庫やピッキングを行う場合などが該当します。

ただし、物流倉庫分野で採用した特定技能外国人を、トラック運転手として働かせることはできません。トラック運転業務は「自動車運送業分野」の対象となります。

物流倉庫分野は受入企業側のハードルが比較的高い

物流倉庫分野では、対象となる事業者であることに加えて、倉庫管理や生産性向上に関するシステム・設備の導入も求められます。

受入企業は、主に次の条件を満たす必要があります。

  • 入庫管理、在庫管理、出庫管理の機能を持つ情報システムを利用している
  • 生産性や労働安全衛生の向上につながる機器または情報システムを利用している
  • 上記のシステムや機器が相互に連携し、機能が拡充される状態になっている
  • 物流倉庫分野の分野別協議会へ加入する
  • 分野を所管する国土交通省の調査や指導などに協力する

入庫・在庫・出庫を管理する情報システムとしては、一般的にWMSと呼ばれる倉庫管理システムが想定されています。

ただし、必ずしも「WMS」という名称の商品を購入しなければならないわけではありません。入庫管理、在庫管理、出庫管理の機能を満たしていれば、自社で構築したシステムなどでも認められる可能性があります。

また、受入企業自身がシステムを所有していなくても、特定技能外国人が勤務する倉庫で利用できる状態であればよいとされています。

物流倉庫分野ならではの気を付けておきたいポイント

物流倉庫分野で特定技能外国人を受け入れる場合は、一般的な特定技能のルールに加えて、倉庫作業特有の安全管理や業務範囲を理解しておく必要があります。

①単純作業だけをさせる制度ではない

物流倉庫分野は、単に人手不足を補うために外国人を「軽作業員」として雇用する制度ではありません。

入庫、検品、格納、在庫管理、ピッキング、出庫など、物流倉庫の一連の業務について一定の知識と技能を持つ人材を受け入れる制度です。

雇用契約書や職務内容には、物流倉庫分野の対象業務に従事することを明確に記載する必要があります。

②派遣ではなく直接雇用が原則

特定技能外国人は、原則として受入企業が直接雇用します。

人材派遣会社が外国人を雇用して物流倉庫へ派遣する形では、物流倉庫分野の特定技能外国人を受け入れることはできません。

物流倉庫でよく見られる業務委託・請負と人材派遣は異なります。

請負会社が受入企業になる場合は、その会社が作業の指示や労務管理を行い、適正な請負体制になっているかを確認する必要があります。

③フォークリフトの運転には資格が必要

物流倉庫では、フォークリフトを使って貨物を移動させることがあります。

最大荷重1トン以上のフォークリフトを運転する場合は、フォークリフト運転技能講習の修了が必要です。

特定技能の評価試験に合格しただけで、すべてのフォークリフトを運転できるわけではありません。

外国人にフォークリフト作業を担当させる場合は、必要な講習を受講させ、安全に関する専門用語や指示を理解できるよう教育する必要があります。

④安全教育を外国人任せにしない

倉庫内では、フォークリフトとの接触、荷崩れ、重量物の落下、コンベアへの巻き込まれ、台車による事故などが発生する可能性があります。

「危険」「立入禁止」「一時停止」などの表示を日本語だけで掲示しても、外国人が正確に理解できるとは限りません。

写真、図、色分け、動画、多言語表示などを使い、外国人本人が理解できる形で安全教育を行うことが重要です。

⑤ピッキングには数字と商品名の理解が必要

ピッキング作業では、商品番号、数量、保管場所、納品先などを正確に確認しなければなりません。

高度な会話力がなくても仕事ができる場合がありますが、数字、記号、商品名、エラー表示などを正確に理解する力が必要です。

ハンディターミナルやWMSの表示についても、外国人が操作しやすい環境を整えることが望ましいです。

⑥流通加工と製造作業を区別する必要がある

物流倉庫分野では、小分け、再包装、タグ付け、ラベル貼り、セット組みなどの流通加工に従事できます。

ただし、商品そのものを完成させたり、性能を向上させたりする作業は、原則として製造工程に該当します。

例えば、完成した商品へのラベル貼りやセット組みは流通加工に該当する可能性がありますが、部品を組み立てて製品を完成させる作業は物流倉庫分野の対象外となる可能性があります。

「倉庫内で行っているから物流倉庫業務」という判断はできません。実際の作業内容から対象業務かどうかを確認する必要があります。

⑦配送業務だけに従事させることはできない

物流倉庫分野は、倉庫内で行う入出庫や保管などの作業を対象とする制度です。

トラックを運転して商品を配送する仕事や、宅配便の配達を主な業務にすることはできません。

倉庫からトラックまで商品を運ぶ作業と、トラックを運転して取引先へ配送する仕事は区別して考える必要があります。

⑧温度環境や勤務時間の説明が必要

物流倉庫には、常温倉庫だけでなく、冷蔵倉庫や冷凍倉庫もあります。

また、早朝、深夜、土日を含む交代制勤務が行われる場合もあります。

採用時には、倉庫内の温度、重量物の有無、立ち仕事の時間、勤務シフト、繁忙期の残業などを具体的に説明することが重要です。

実際の現場写真や動画を見せることで、入社後のミスマッチを防ぎやすくなります。

特定技能外国人本人に必要な条件

物流倉庫分野で特定技能1号として働くためには、原則として次の試験に合格する必要があります。

  • 物流倉庫分野特定技能1号評価試験
  • 国際交流基金日本語基礎テスト、または日本語能力試験N4以上

技能評価試験では、貨物の入出庫、検品、保管、ピッキング、安全管理など、物流倉庫で働くために必要な知識と技能が確認される予定です。

ただし、2026年8月時点では、物流倉庫分野の特定技能1号評価試験の実施要領と試験開始時期は調整中です。

試験が開始されなければ、原則として物流倉庫分野の特定技能1号に必要な技能要件を満たすことができません。

そのため、企業が今すぐできることは、採用候補者を確定することよりも、自社が受入対象に該当するか、WMSなどの受入要件を満たしているかを確認することになります。

技能実習から自動的に移行できるとは限らない

物流倉庫分野は新しく追加された分野であるため、過去に倉庫で技能実習をしていたという理由だけで、物流倉庫分野の特定技能へ試験免除で移行できるとは限りません。

技能実習から特定技能への試験免除は、技能実習の職種・作業と特定技能の業務区分に関連性があり、技能実習2号を良好に修了していることなどが条件になります。

工業包装、食品製造、工業製品製造などの技能実習中に倉庫作業を経験していても、それだけで物流倉庫分野の技能試験が免除されるわけではありません。

物流倉庫分野への変更を希望する場合は、原則として物流倉庫分野の特定技能1号評価試験を受験することを前提に考える必要があります。

分野別協議会への加入が必要

物流倉庫分野で特定技能外国人を受け入れる企業は、国土交通省が設置する分野別協議会へ加入する必要があります。

ただし、2026年8月時点では、物流倉庫分野の分野別協議会は設置に向けた調整中で、加入要件や受付開始時期はまだ正式に案内されていません。

協議会では、受入状況や人手不足の状況、安全衛生、生産性向上に関するシステム・機器の利用状況などが確認される予定です。

制度の開始直前になって慌てないように、次の事項を今から整理しておくことをおすすめします。

  • 自社が受入可能な3類型のどれに該当するか
  • 倉庫業の登録または貨物自動車運送事業の許可があるか
  • 業務委託・請負の契約関係が適正か
  • 入庫・在庫・出庫を管理するシステムがあるか
  • 生産性や安全衛生の向上につながる設備・システムを利用しているか
  • 外国人に担当させる業務が対象範囲に含まれているか

雇用条件は日本人と同等以上

物流倉庫分野でも、外国人であることを理由に賃金を低く設定することはできません。

同じ程度の経験や能力を持ち、同じ業務に従事する日本人従業員と同等以上の報酬を設定する必要があります。

基本給だけでなく、次のような条件についても不合理な差を設けないことが重要です。

  • 残業代
  • 深夜手当
  • 休日手当
  • 通勤手当
  • 資格手当
  • 賞与や昇給
  • 福利厚生
  • 社会保険への加入

冷凍・冷蔵倉庫での作業手当やフォークリフトの資格手当を日本人に支給している場合は、同じ条件を満たす特定技能外国人にも適切に支給する必要があります。

間違えやすいポイント

物流倉庫分野は、自動車運送業分野、工業製品製造業分野、飲食料品製造業分野などと混同しやすいため、注意が必要です。

  • 物流倉庫分野
    貨物の受け取り、検品、移動、格納、保管、ピッキング、仕分け、梱包、出荷準備などを行います。
  • 自動車運送業分野
    トラック、バス、タクシーなどを運転する業務を行います。
  • 工業製品製造業分野
    部品の加工や組立てなど、工業製品を製造する業務を行います。
  • 飲食料品製造業分野
    食品工場などで食品の製造、加工、包装などを行います。

同じ建物や物流センター内で行われている作業でも、商品の製造工程なのか、完成した商品の保管・出荷工程なのかによって、該当する特定技能分野が変わる可能性があります。

企業の業種名だけで判断せず、外国人が実際に担当する作業内容を一つずつ確認することが重要です。

まとめ

今回のまとめ

  • 物流倉庫分野は2026年1月に特定技能の対象へ追加された
  • 対象業務は、貨物の入出庫、検品、格納、保管、ピッキング、流通加工、出荷準備など
  • 受け入れられる事業者は、登録倉庫業者、倉庫作業の受託会社、一定の運送事業者の3類型
  • 倉庫管理システムや生産性・安全性を向上させる設備の利用が求められる
  • 人材派遣ではなく、受入企業による直接雇用が原則
  • トラック運転や配送だけを担当させることはできない
  • 物流倉庫分野では、現時点で特定技能2号の受け入れはない
  • 2026年8月時点では、技能評価試験と協議会が準備中
  • 現在は、自社が受入要件を満たしているか確認する準備期間

物流倉庫分野は、EC市場の拡大などによって人手不足が続く倉庫業界にとって、今後注目される特定技能分野の一つです。

一方で、倉庫管理システムの利用、受入事業者の類型、業務委託元との協定、安全衛生設備など、他の特定技能分野にはない受入条件があります。

「倉庫内の仕事だから対象になる」と考えるのではなく、自社の許認可、契約関係、システムの利用状況、外国人が担当する業務内容を事前に確認することが重要です。

Step In Globalでは、物流倉庫分野の特定技能外国人の受け入れにご興味のある企業様に向けて、無料相談を承っております。

自社が受入対象になるか分からない場合や、制度開始に向けて今から準備しておきたい場合は、ぜひお気軽にご相談ください。